隠され人の起こり

 あるとき、全能の神がアダムとイヴのもとにやって来た。彼らは心から神を歓迎し、家にあるものを全て見せた。自分たちの子どもたちも見せたところ、神にはその子たちは前途有望に思えた。見せてくれた子たち以外にも子どもがいるのではないか、と神は訊いた。いいえ、とイヴは答えた。実のところ、何人かの子どもたちの身体を洗い終えていなかったため、イヴはその子たちを神に見せることを恥じて隠していたのだった。そのことを神は知っていた。「私の前から隠さなければならないものは、人間の前からも隠さなければならない」。そうして隠されていた子どもたちは人間の目には見えなくなり、岩だらけの丘陵や草の生えた丘、大岩などのなかで暮らすことになった。彼らからは妖精[1]タイトルにある「隠され人(huldufólk)」のこと。アイスランド民話において主に妖精は、隠され人のことを指す。が生まれ、イヴが神に見せた子どもたちからは人間が生まれた。妖精自身が望まない限り、人間は決して彼らを見ることができないが、妖精たちは人間を見ることができ、自分の姿を人間に見えるようにすることもできる。

 

(„Huldumanna-„Genesis.““ 1862. Íslenzkar þjóðsögur og æfintýri. I. bindi. Safnað hefur Jón Árnason. Leipzig: J.C.Hinrichs. Bls. 5.)

脚注

脚注
1 タイトルにある「隠され人(huldufólk)」のこと。アイスランド民話において主に妖精は、隠され人のことを指す。