北へ下へ行け

 こんな話がある。あるとき、ひとりの男がよくするように漁に出たのだが、陸に戻ろうとしたとき、南から向かい風が吹いてきて、陸からどんどん遠く遠くへと流されていった。これは沖まで流されたに違いない。男が狼狽えだしたのは、遠く...