「第二言語としてのアイスランド語(Íslenska sem annað mál)」課程の紹介

 国立アイスランド大学人文学部アイスランド語・比較文化学科学士課程「第二言語としてのアイスランド語」(Íslenska sem annað mál. 旧称「外国人のためのアイスランド語」)について、簡単に紹介します。

 以下に記載することは、2018年6月現在の情報を踏まえてはいますが、授業内容については、主に筆者の体験に基づいて書いているため、今後の授業とは大きく異なる可能性があります。


 国立アイスランドの大学の学士課程は、医学部などの一部を除けば、三年制のカリキュラムです。[1]修士課程は二年制で、博士課程は四年制。

 学士課程「第二言語としてのアイスランド語」も、同様に三年制で設計されており、取得予定の単位数によって、三つに細分化されています。

  • 180単位の学士号課程
  • 120単位の主専攻課程
  • 60単位の副専攻課程

 上記それぞれのコースで履修する授業が大きく異なるということは全くなく、180単位の学士号課程を何年次まで続けるか、ということで分かれていると見做せます。

 ただ、学士号を取得して、もしくは、主専攻として「第二言語としてのアイスランド語」を修了するためには、アイスランド語で卒業論文を書かなければなりません。
一方、副専攻の修了要件は、指定授業の単位を取得するだけとなります。

 つまり、学歴としては

  • 一年目の授業の単位を取って修了としたら、副専攻
  • 二年目までのすべての授業の単位を取り、学士論文を書いて修了としたら、主専攻
  • 三年目までのすべての授業の単位を取り、学士論文を書いて修了としたら、学士号

となります。

 学士号を取るつもりで入学したけれど、別のことに興味が出たので、「第二言語としてのアイスランド語」は副専攻にして、別の課程で主専攻を取る、と在籍中に変更することも可能です。
 しかし願書出願時には、どの課程で「第二言語としてのアイスランド語」を履修するのかを明示する必要があります。[2] … Continue reading

 さて、そもそも学士課程「第二言語としてのアイスランド語」に入学するためには、英語の語学力証明(TOEFL 79、もしくは、IELTS 6.5が最低値)とアイスランド語の入学試験を突破する必要[3] … Continue readingがあるので、その入学試験についても、少しだけ述べます。[4] … Continue reading

 大学の情報によると、試験の難易度は、アイスランド大学から提供されている無料アイスランド語学習サイト「Icelandic Online」のレベルⅠ~Ⅱとのことです。
 僕が受けた時は、案内されている程に難易度が高いものではなかったのですが、基礎的な文法問題、文章読解、会話の聞き取りで構成されていました。
 ちなみに、この入学試験に落ちても、一年制のディプロマ課程には通うことができるので、試験結果でアイスランド大学への入学が拒否されることはありません。[5] … Continue reading

 この入学試験ではなく、編入試験に合格すれば、「第二言語としてのアイスランド語」学士課程の二年次に飛び級することも可能です。編入試験の内容は、学士課程「第二言語としてのアイスランド語」の一年生が年度末に受ける試験と同じ難易度のもの、と耳にしたことがありますが定かではありませんので、各自で試験情報を問い合わせてください。

 編入試験にせよ、入学試験にせよ、無事に試験に受かったのなら、8月の終わりか9月の初めから新年度および秋学期が始まります。

 

 以下では、学士課程「第二言語としてのアイスランド語」(180単位)の各授業を紹介します。

 大学が発表しているシラバスを英語で確認したい方は、「Icelandic as a second language, BA, 180 ECTS(Íslenska sem annað mál, BA, 180 einingar)」の各授業名をクリックして、ご確認ください。

 学士課程の授業紹介のあとに、ディプロマ課程についても簡単に紹介しています。
 こちらのシラバスを確認したい場合は、「Icelandic as a second language, for Practical Purposes, Diploma, 60 ECTS(Íslenska sem annað mál, hagnýtt nám, Grunndiplóma, 60 einingar)」の各授業名をクリックして、ご確認ください。

 

一年次
秋学期
【必修】文法Ⅰ(Málfræði I / Grammar I) 10単位
【必修】アイスランド語Ⅰ(Íslenskt mál I / Icelandic Language I) 10単位
【必修】会話練習Ⅰ(Talþjálfun I / Conversational practise I) 10単位

春学期
【必修】文法Ⅱ(Málfræði II / Grammar II) 10単位
【必修】アイスランド語Ⅱ(Íslenskt mál II / Icelandic Language II) 10単位
【必修】会話練習Ⅱ(Talþjálfun II / Conversational practise II) 10単位

二年次
秋学期
【必修】屈折形態論Ⅰ(Beygingarfræði I / Inflectional Morphology I) 5単位
【必修】言語使用Ⅰ(Málnotkun I / Language Usage I) 5単位
【必修】音声・音韻論(Hljóð- og hljóðkerfisfræði / Phonetics and Phonology) 5単位
【必修】言語学入門(Inngangur að málvísindum / Introduction to Linguistics) 5単位
【必修】同時代文学と文学理論(Samtímabókmenntir og bókmenntafræði / Contemporary Literature and Literary Theory) 10単位

春学期
【必修】屈折形態論Ⅱ(Beygingarfræði II / Inflectional Morphology II) 5単位
【必修】言語使用Ⅱ(Málnotkun II / Language Usage II) 5単位
【必修】アイスランド史(Íslandssaga / Icelandic History) 10単位
【必修】アイスランドの民話と民間信仰(Íslenskar þjóðsögur og þjóðtrú / Icelandic folktales) 10単位

三年次
秋学期
【必修】アイスランド文学Ⅰ(Íslenskar bókmenntir I: Fyrri alda / Icelandic Literature I: 874-1874) 10単位
【必修】統語論Ⅰ(Setningafræði I / Syntax I) 5単位
【必修】言語使用 Ⅲ(Málnotkun III / Language Usage III) 5単位
【選択】第二言語習得の研究法(Rannsóknaraðferðir í annarsmálsfræðum / Research Methods in Second Language Studies) 10単位
【選択】翻訳(Þýðingar / Translation) 10単位
【選択】学士論文(BA-ritgerð í íslensku sem öðru máli / BA-thesis in Icelandic as a Second Language) 10単位

春学期
【必修】アイスランド文学Ⅱ(Íslenskar bókmenntir II / Icelandic Literature II) 10単位
【必修】統語論Ⅱ(Setningafræði II / Syntax II) 5単位
【必修】メディアの言語(Fjölmiðlamál / Language in the Media) 5単位
【選択】アイスランド語史の諸要素(Þættir úr íslenskri málsögu / Milestones in the history of the Icelandic) 10単位
【選択】学士論文(BA-ritgerð í íslensku sem öðru máli / BA-thesis in Icelandic as a Second Language) 10単位

年次未指定
秋学期
【選択】アイスランド文化(Íslensk menning / Icelandic Culture) 10単位

 

※【必修】とあるのは、文字通り必修の授業です。
※【選択】とあるのは、履修するかを学生本人で選べる選択制の授業です。
※卒業要件に必要な単位として算入できない「アイスランド文化」という授業を除き、一年次からすべての授業はアイスランド語で行われます。

 

文法Ⅰ・Ⅱ(Málfræði I・II / Grammar I・II)
 アイスランド語の基本文法を学ぶ授業です。助動詞の使い方なども少し説明されますが、基本的な語形変化をひたすら覚えることが求められます。
 覚えることの量は多いものの、授業内容は難しくありません。この授業で扱うことをしっかり覚えないと、以降の授業で非常に苦労すると思われます。

 教科書も教師の説明もアイスランド語でのみ行われるので、いまいち理解できているのか確信が持てないことが多くありました。分からないことがあったら遠慮なく質問するように、と言われたものの、英語での質問は受け入れられず、たとえ英語での質問を受けたとしても、返答はアイスランド語でなされました。
 また、機械的に文法を暗記することを苦手な人たちが、脱落していった授業です。

 

アイスランド語Ⅰ・Ⅱ(Íslenskt mál I・II / Icelandic Language I・II)
 アイスランド語の文章をひたすら読んでいく授業です。予習が必須で、最初に読むのは5行ほどの簡単な文章ですが、授業開始から一ヶ月も経てば、ショートショートや小説の一場面、文化や歴史、産業の紹介など、様々な文章を次々と読むことになりました。

 また、ほぼ毎週、簡単なアイスランド語作文の宿題があり、それ以外にも、秋学期には児童書を、春学期にはペーパーバックを丸々一冊読み、その本についてA4三枚程度のレポートをアイスランド語で書く課題がありました。
 このレポートが書けないと、二年次以降の授業をこなすことが絶望的に厳しくなるでしょうから、大変かもしれませんが、逃げずに書き上げましょう。作文の出来よりも、ある程度長い文章を書き上げられることが大切です。

 

会話練習Ⅰ・Ⅱ(Talþjálfun I・II / Conversational practise I・II)
 アイスランド語会話の授業です。
 授業は、アイスランド語の音韻についての説明(主にアイスランド語の母音と子音、変音について)とクラスを少人数のグループに分けて行う会話練習の二部構成でした。

 学士課程では、会話の授業が少なく、この授業でアイスランド語を話す自分に慣れるのがよいかもしれません。でないと、その後の授業で突然、プレゼンをしろ、ディスカッションに参加しろ、とハードルが一気に上がる恐れがあります。

 

屈折形態論Ⅰ・Ⅱ(Beygingarfræði I・II / Inflectional Morphology I・II)
 一年次の授業「文法Ⅰ・Ⅱ」の発展として、例外的な語形変化をひたすら学びます。アイスランド語の屈折形態論についての論文が補助教材として指定されているので、それらを読む必要があり、くわえて、提出課題をこなすために、自分でもアイスランド語の言語学についての資料を探して読む必要がありました。

 

言語使用Ⅰ・Ⅱ(Málnotkun I・II / Language Usage I・II)
 アイスランド語での学術論文の書き方、引用の仕方を学んだのち、言語学に関連するアイスランド語のレポートをグループワークで製作して発表することや、人文学部の公開講座に参加し、その概要をA4一枚にまとめて提出する課題がありました。
 また、一年次の「会話訓練Ⅰ・Ⅱ」の発展として、クラス内でのディスカッションだけでなく、自分の話すアイスランド語を録音して聞き、ネイティブスピーカーと自分の発音の何がどのように違うのかを分析することや、アイスランドの公共機関や企業に自分たちでメールを書いてアポを取り、見学・取材をしたあとにクラス内で発表する、というグループワークもありました。

 

音声・音韻論(Hljóð- og hljóðkerfisfræði / Phonetics and Phonology)
 一年次の「会話訓練Ⅰ・Ⅱ」で学んだ発音規則を復習しつつ、より細かい規則や、アイスランド語以外の言語との音韻の違いを学ぶ授業です。学期末にはアイスランド語の音韻論についての筆記試験にくわえ、小説の一部、7~8行ほどを授業中に朗読する課題がありました。

 

言語学入門(Inngangur að málvísindum / Introduction to Linguistics)
 アイスランド語に留まらない言語学入門の授業。ビクトリア・フロムキンらのAn Introduction to Languageを教科書として使うこともあり、アイスランド語だけでなく、英語を大量に読む必要がありました。この授業をはじめとして、二年次から、英語の文献も読まなければいけないことが多くなってきました。

 学生それぞれの母語についてアイスランド語でプレゼンするグループワークもありましたが、クラス内の日本語母語話者が僕だけだったので、ひとりで行いました。

 

同時代文学と文学理論(Samtímabókmenntir og bókmenntafræði / Contemporary Literature and Literary Theory)
 この授業を僕が受けたときは、「同時代文学」という授業と「文学入門」という授業のふたつに分かれていたので、それぞれについて紹介します。

同時代文学(Samtímabókmenntir / Contemporary Literature)
 平均で二週に一冊、アイスランド語の文学作品を読み、その本についてA4三枚程度のレポートを提出しなければならず、鬼門として知られ、脱落者が多かった授業です。
 児童文学もあれば、純文学の作品を集めた短篇集や詩集、戯曲など、様々なジャンルのものを読みましたが、殆どの作品は1980年以降に発表されたものでした。

 二週間に一冊というのは、大した量ではないように思われるかもしれませんが、小説などを読むには語彙が貧困であったことにくわえ、それまでの授業で習っていない語法が作品内に散見し、文法に関しての説明が授業で一切なかった(訊いても、「そういうものだから覚えて慣れて」と言われるだけであった)ために、予習がとても大変でした。

文学入門(Inngangur að bókmenntafræði / Introduction to Literature)
 主にレトリックとナラトロジーについて扱われ、授業で紹介された理論に基づいて、指定された短篇や詩について200~300語で論じる課題が隔週で出されました。扱う作品は、主に20世紀のものでしたが、アイスランドの歴史や地理の知識なしには読解できないものもありました。
 また、期末には、指定された短篇小説を読解し、A4五枚程度のレポートにまとめる、という課題と、授業でならった理論について説明する筆記試験がありました。

 

アイスランド史(Íslandssaga / Icelandic History)
 日本語訳もある『アイスランド小史』(Íslandssaga í stuttu máli)の最新版を読み進めつつ、ヴァイキングの植民から現在までのアイスランド史を学ぶ授業。
 補助資料が毎回あったのですが、その量が、『アイスランド小史』の数倍多かったです。

 一学期をかけて、アイスランドの歴史に関する小論をA4五枚程度で書く課題がありました。
 テーマの設定、資料の収集を学生各自で行い、中間報告としてドラフト版を担当教員に提出したあと、教員から簡単なコメントを貰い、学期末に完成稿を提出、という流れです。

 僕は、「19世紀アイスランドにおける民話集の製作と国民像の創作について」という小論を書きました。歴史学の論文かと言われると微妙なテーマですが、特に問題はありませんでした。

 

アイスランドの民話と民間信仰(Íslenskar þjóðsögur og þjóðtrú / Icelandic folktales)
 19世紀に収集されたアイスランドの民話と、民話が素材に使われた現代小説や論文を読む授業です。毎度の予習として、民話を三、四篇(長さは一定でない)と20ページ弱の論文を二本か、論文一本に、30ページほどの短篇小説を一篇を読まなければいけませんでした。
 19世紀のアイスランド語と現代のアイスランド語は、言い回しや語彙など異なる部分がそれなりにあるのですが、それについては殆ど何の補足もないので、数をこなして語感を獲得していく必要がありました。
 また、「アイスランド史」と同様、一学期かけてアイスランド民話について小論を書く課題がありました。

 

アイスランド文学Ⅰ・Ⅱ(Íslenskar bókmenntir I・II / Icelandic Literature I・II)
 中世から現代までのアイスランド文学の代表作をひたすら読んでいく授業です。
 秋学期の「アイスランド文学Ⅰ」では、エッダやサーガといった中世文学から19世紀半ばまでの作品を扱います。
 授業開始後の最初の一ヶ月で、「巫女の予言」や「スノリのエッダ」などの北欧神話で有名なテクストにくわえ、『エギルのサガ』や『ニャールのサガ』を読まなければならなかったのが、大変でした。授業で使ったテクストは、「ek」を「ég」にする等、ある程度は現代アイスランド語に直されたものを使っていました。

 提出課題はふたつあって、ひとつは、『エギルのサガ』か『ニャールのサガ』についての論文や本を探してきて、アイスランド語の学術データベースに登録するために、その文献の概要を書くことでした。
 もうひとつは、授業で扱った作品が現代でどのように解釈、翻案、引用されているのかを実例と原典を比較して論じよ、というレポート課題でした。

 この頃になると、書きたいことはあるのだけれど、レポートの語数制限のために全部は書けない、というようになり、「アイスランド語で長い文章が書けない」から「アイスランド語で上手く書けない」と思うようになり、書くこと自体には抵抗感がなくなりました。
 それまでは、数をこなすのに必死でしたが、ようやく、何を如何に書くか、と意識し始められました。

 春学期の「アイスランド文学Ⅱ」では、主にロマン主義以降の作品を読みました。
 授業で扱う作家や詩人について紹介するプレゼンの課題と、授業で扱わなかった作家や詩人を取り上げ、何故その人物が20世紀以降のアイスランド文学において重要なのかを論じよ、というレポート課題がありました。

 

統語論Ⅰ・Ⅱ(Setningafræði I・II / Syntax I・II)
 言語学者の間でも決着のついていない事柄も含め、アイスランド語の統語論についての授業でした。教員から何かを教わるのでなく、論文などを読みつつ自分で考えろ、と暗に言われていました。
 統語論についての教科書も多少使いましたが、最も参照したのは、Íslensk tungaシリーズの本でした。

 

言語使用 Ⅲ(Málnotkun III / Language Usage III)
 二年次の「言語使用Ⅱ」を引き継ぎ、クラス内でグループディスカッションを毎回行う一方、ここ10年内にアイスランド語で書かれた学士論文のなかから三本を自分で選んで読み、そのうちの二本の構成を分析して発表することと、同じ学部の下級生のアイスランド語の授業を一回分担当することが、必修課題でした。

 

メディアの言語(Fjölmiðlamál / Language in the Media)
 アイスランド語のマスメディアで使われる語法は、通常の話し言葉とも書き言葉とも異なるのですが、では一体どのように異なるのか、ということを実例とともに学ぶ授業。
 アイスランド国営放送ことRÚV(ルーフ)でのアイスランド語使用規則や、アイスランド政府の言語政策についてにくわえ、アイスランド語の新聞の見出しや字幕の仕組みも学びました。

 

翻訳(Þýðingar / Translation)
 聖書翻訳からローマン・ヤーコブソンまでの西洋の翻訳史と翻訳論をざっくり学び、さらに、自分自身で外国語のテクスト(ただし文学作品を除く)を母語に翻訳する授業。
 僕の場合は、アイスランド語の文章を日本語に訳しました。

 卒業論文の代わりに翻訳を希望する場合、この授業を取らねばならないらしいです。

 

第二言語習得の研究法(Rannsóknaraðferðir í annarsmálsfræðum / Research Methods in Second Language Studies)
 第二言語習得の方法論について概括する入門者向けの授業。一例として、認知主義教授法(Cognitive Approach)、会話分析(conversation analysis)、成員カテゴリー化分析(Membership categorization analysis)、社会文化理論(Sociocultural theory)、使用基盤言語学(Usage-based Linguistics)などを扱うようです。
 ただ、僕は履修していない授業なので、詳細は分かりません。

 

アイスランド語史概括(Þættir úr íslenskri málsögu / Milestones in the history of the Icelandic)
 アイスランド語史上の特筆すべき事柄を時系列に沿って紹介し、論じる授業。主に音韻変化について扱うようですが、語形変化や統語論も取り上げるようです。
 ただ、僕は履修していない授業なので、詳細は分かりません。

 

学士論文(BA-ritgerð í íslensku sem öðru máli / BA-thesis in Icelandic as a Second Language)
 学士論文には学期指定がないため、三年次の秋学期に書いてしまっても、春学期に書いても構いません。
 論文のテーマを決め、担当教員を見つけ、相談し、実際に書き、指導してもらう、といったことは、すべて自分で行わなければいけません。
 もちろんアイスランド語で書かなければならず、分量の目安は、A4で30ページでした。

 論文ではなく、翻訳を学士論文代わりに提出することもできますが、その場合には、三年次秋学期の「翻訳」の授業を履修し、さらに自分の翻訳についての注解をA4で20ページ程度は書かなければならないようです。

 

アイスランド文化(Íslensk menning / Icelandic Culture)
 文学を中心としつつも、アイスランドでの考古学的発見や民間伝承、美術やポップカルチャーなどについても学ぶ授業。

 交換留学生も履修できる授業ですが、「第二言語としてのアイスランド語」の卒業要件の単位としては算入されません。

 


「第二言語としてのアイスランド語」ディプロマ課程
 ディプロマ課程は60単位の一年制のものしかなく、それ以上にアイスランド語の勉強を続けたい場合は、学士課程に進む必要があります。
 カリキュラムが紹介されているページによれば、「アイスランド語の事前知識は要求しておらず、入門者向け」のコースとして設計されているようですが、授業での使用言語はアイスランド語として登録されています。

 僕がディプロマ課程の各授業を受けたとき、はじめのうちは英語で授業が行われていたのですが、突然アイスランド語で行われるようになりました。
 もしかしたら、シラバスには英語開講の授業と書かれていたのにアイスランド語で授業が行われたことに苦情があったのかもしれませんが、詳しい事情は知りません。
 学期の途中から、もしくは、はじめからアイスランド語で授業を受けることになるかもしれません。

 ディプロマ課程に入学するために必要なのは、英語の語学力証明(TOEFL 79、もしくは、IELTS 6.5以上)だけで、学士課程のような入学試験はありません。

 

 選択制の授業は、英語で開講されていますが、修了要件の単位には算入されません。

秋学期
【必修】音声と聞き取りⅠ(Hljóð og hlustun I / Pronouncing and Listening I) 5単位
【必修】会話と表現Ⅰ(Tal og tjáning I / Speech and Expression I) 5単位
【必修】語彙と文法Ⅰ(Orðaforði og málfræði I / Vocabulary and Grammar I) 10単位
【必修】アイスランド語自主学習Ⅰ(Sjálfsnám í íslensku I / Self Study in Icelandic I) 10単位
【選択】アイスランド語基礎(Íslenskugrunnur / Icelandic – the Basics) 10単位
【選択】アイスランド文化(Íslensk menning / Icelandic Culture) 10単位

春学期
【必修】音声と聞き取りⅡ(Hljóð og hlustun II / Pronouncing and Listening II) 5単位
【必修】会話と表現Ⅱ(Tal og tjáning II / Speech and Expression II) 5単位
【必修】語彙と文法Ⅱ(Orðaforði og málfræði II / Vocabulary and Grammar II) 10単位
【必修】アイスランド語自主学習Ⅱ(Sjálfsnám í íslensku II / Self Study in Icelandic II) 10単位
【選択】アイスランド語基礎(Íslenskugrunnur / Icelandic – the Basics) 10単位

 

音声と聞き取りⅠ・Ⅱ(Tal og tjáning  I・II / Pronouncing and Listening I・II)
 アイスランド語の基礎的な発音規則を学び、簡単な文章の聞き取りや会話の練習を行いました。
 内容はとても易しいのですが、甘く見ていると、学期の途中からアイスランド語で授業が行われ始めたときに苦労すると思われます。

 

会話と表現Ⅰ・Ⅱ(Tal og tjáning I・II / Speech and Expression I・II)
 アイスランド語での会話の始め方や終わり方、本屋やパン屋、プールなどの日常生活で使える簡単なアイスランド語表現を学ぶことを目指す授業。
 実際に本屋やパン屋に行ってアイスランド語を使うなど、授業外での実習もありました。

 

語彙と文法Ⅰ・Ⅱ(Orðaforði og málfræði I・II / Vocabulary and Grammar I・II)
 簡単なアイスランド語の文章を書き、話すために必要な語彙と初級文法の獲得を目指す授業。
 定期的に作文の宿題が出されました。

 

アイスランド語自主学習Ⅰ・Ⅱ(Sjálfsnám í íslensku I・II / Self Study in Icelandic I・II)
 文法、聞き取り、読解のなかから各自で強化したいものを選び、それに沿った自習教材を使ってアイスランド語を自主学習する授業。進捗の確認は、学期の中間に一度あっただけでした。
 また、自分で選んだもの以外に共通で「Icelandic Online」を使っての自習も課されました。

 

アイスランド語基礎(Íslenskugrunnur / Icelandic – the Basics)
 基礎的なアイスランド語の文法と語法にくわえ、アイスランド文化や社会についても紹介する授業で、積極的に自習する必要があるとのことです。
 ただ、僕は履修したことがないので、詳細は分かりません。

 この授業は、秋学期の春学期の両学期で開講されますが、履修できるのは、どちらか一度だけです。

 

アイスランド文化(Íslensk menning / Icelandic Culture)
 上記、学士課程の「アイスランド文化」と同じ授業です。


 

最終更新日:2019年8月1日。脚注を追加。

脚注

脚注
1 修士課程は二年制で、博士課程は四年制。
2 実際に在籍中のコース変更を行う場合は、関係学部に相談して許可を得たあと、学生登録課(Nemendaskrá)で手続きを行うことになるはずですが、詳しくは、ご自身で問い合わせてください。
3 2019年現在、日本の高等学校を卒業したか高等学校卒業程度認定試験に合格しただけでは、アイスランド大学に留学や入学することはできません。アイスランド大学は、日本からの学生に対しては、「日本の高等学校卒業証明書+大学等での1年間の勉強期間の証明」を留学や入学の要件としています。参照:https://english.hi.is/admission-requirements。「アイスランド大学での学生生活について-質問・回答集-」で多少説明しましたが、最新の確実な情報を得るためには、まずアイスランド大学のFAQに目を通し、それでも疑問が解消しなかった場合は、FAQで指定されている事務所に連絡を取るとよいと思います。
4 「第二言語としてのアイスランド語」のディプロマ課程を修了している場合は、免除されるらしいのですが、伝聞情報なので、人文学部(Hugvísindasvið)に確認してください。

追記(2019年8月1日):ディプロマ課程修了生でも学士課程への入学試験を課された友人がいます。ディプロマ課程修了の直ぐ次の年に学士課程に入学したわけではないためか、それとも誰であっても学士課程に入るための要件として入学試験の合格が規定されたのか、たまたま入学試験が免除にならない年(ありえなくはない)だったのか分かりません。やはり確実なのは、上述の通り、人文学部(Hugvísindasvið)に確認することです。
5 入学試験の日程などの詳細は、願書提出後に大学から案内があるはずですが、事前に知りたい場合は、人文学部に問い合わせてください。
 何か問題が生じたとき、自分でやりとりをしたメールがあると、役立つでしょう。