スコッヴィンとスクッガバルドゥル

曰く、スコッヴィンとは狐と猫のあいだに生まれるのであり、猫の方が母である。スコッヴィンは、産まれてくる前にかならず殺されねばならない。* スクッガバルドゥルというのは父系が猫で母系が狐であり、誰かの家畜を八つ裂きにするために魔法使いが力を与えたステプニヴァルグルと呼ばれる狐と同じく、牙を剥いて襲いかかってくるかもしれないが、スクッガバルドゥルを銃で撃とうとしても、その銃を点火することは決してできない。

あるとき、一匹のスクッガバルドゥルが、フーナヴァトゥンスフレフプル区民[1]アイスランド北部のフーナヴァトゥンスシストゥラ行政区(Húnavatnssýsla)の住民。の家畜を八つ裂きにした。そいつは、ブレンドゥギール渓谷[2]Blöndugil。アイスランド北部にある全長18㎞の渓谷で、ホフスイェークトゥル氷河(Hofsjökull)から流れるブランダ(Blanda)川が流れている。のあたりにあるほら穴で見つかり、集まった人々の手で殺されることになった。刺し殺される寸前、スクッガバルドゥルは言った。「ボットゥラスタージィルの猫[3]Bollastaðir。現在のボウルスターザルフリーザルフレップル地区(Bólstaðarhlíðarhreppur)にあった土地。に伝えろ。スクッガバルドゥルは、今日、地の割れ目にて刺し殺された、と」。これは驚くべきことだと思われた。スクッガバルドゥルを殺した男がボットゥラスタージィルに着いたときは、もうすっかり夜になっていた。男はベッドで横になり、今日の出来事について話しだした。梁の上には一匹の雄猫がいた。そして、男がスクッガバルドゥルの今際の言葉を口にしたとき、梁にいた猫が飛びかかって爪と顎を男の喉にずぶりと刺しこみ貼りついた。引き剥がそうとしても、首を落とすまで猫が離れることはなく、それができたときには男は既に死んでいた。

スクーリ・ギストゥラソン牧師[4]スクーリ・ギストゥラソン(Skúli … Continue reading収集。マイリフェフトゥル山[5]Mælifell。おそらく、アイスランド南部にあるミールダルスヨークトル氷河(Mýrdalsjökull)の北側にある山のこと。のエイナル・ビャルトゥナソンの話より。

 

*スコッヴィンに関しては、ふたつの話がある。次の話を参照。

(„Skoffín og Skuggabaldur.“ 1862. Íslenzkar þjóðsögur og æfintýri. I. bindi. Safnað hefur Jón Árnason. Leipzig: J.C.Hinrichs. Bls. 612-613.)

脚注

脚注
1 アイスランド北部のフーナヴァトゥンスシストゥラ行政区(Húnavatnssýsla)の住民。
2 Blöndugil。アイスランド北部にある全長18㎞の渓谷で、ホフスイェークトゥル氷河(Hofsjökull)から流れるブランダ(Blanda)川が流れている。
3 Bollastaðir。現在のボウルスターザルフリーザルフレップル地区(Bólstaðarhlíðarhreppur)にあった土地。
4 スクーリ・ギストゥラソン(Skúli Gíslason)(1825年-1885年)は、アイスランド南部にあるフリョウトゥスフリーズのブレイザボウルススターズル教区(Breiðabólsstaður í Fljótshlíð)の牧師であり、民話の収集も行った。
5 Mælifell。おそらく、アイスランド南部にあるミールダルスヨークトル氷河(Mýrdalsjökull)の北側にある山のこと。