アイスランド大学での学生生活について
-質問・回答集-

 アイスランド大学での学生生活について受けた質問の回答を、以下にまとめます。
 網羅性はありません。

 気が向いた時や必要な時、加筆修正するつもりです。

(最終更新日:2019年8月1日)


 

入学要件

授業

単位

学費

生活費

アルバイト

その他

 


 

【入学要件】

・日本の高校を卒業しただけではアイスランドの大学に入学も留学もできない

 アイスランド大学に入学もしくは留学するためには、原則として、
「日本の高等学校卒業証明書+大学等での1年間の勉強期間の証明」
が必要です。[1] … Continue reading

 国際標準教育分類(ISCED)でレベル3以上の教育(日本では高等学校での教育に相当)を最低でも4年分修了することが、アイスランドでの大学に入学するための要件であり、これはアイスランドの大学に留学したい学生にも当てはまります。

 ちなみに、日本で高校を卒業した直後にアイスランド大学に入学した前例がないわけではありませんが、それが可能だったのは、日本の高校を休学して海外の高等学校(国際標準教育分類(ISCED)でレベル3以上の学校)に1年以上留学していたことが評価されたからのようです。

 

【授業】

・新年度は秋に始まり、二学期制
 例年、8月末に秋学期が始まり、12月下旬頃で終わります。
 冬休みを挟んで、1月上旬が終わる前に春学期が始まります。
 春学期には一週間程度のイースター休みがあり、5月中旬頃には、春学期が終わります。
 だいたい、6月・7月・8月は、夏休みです。

 秋学期は、極夜を目の前にして夜がどんどん長くなっていき、屋内に籠りがちになる頃に終わり、春学期は、日がどんどん長くなっていき、夏を前に気もそぞろになる頃に終わります。
 ただ、学期最終日は、実際のところ、各学生で異なります。
 学生にとっての学期最終日は、履修している授業の試験やレポートの提出の最終日であることが多く、その日程は授業ごとに異なるからです。

 

・授業は平日のみ
 社会人用の課程を履修しているのでなく、かつ、フィールドワークや特別授業がなければ、授業があるのは、通常、月~金曜日の平日のみです。

 土曜日にも大学施設に入ることはできますが、学内書店などは閉まっています。
 また、日曜日や祝日には、図書館と学生バーなどの一部施設を除き、大学施設は施錠されます。
 しかし、1500 ISK(アイスランド・クローナ)(そのうち、1000ISKがデポジット)の有料学生カードを持っていれば、PC室や自習室の利用はできます。

 

授業時間は少ない
 5単位の授業であれば、一週間のうちで授業が行われるのは、多くの場合、90分1コマ(40分の授業 + 10分間の中休み + 40分の授業)のみです。
 10単位の授業の場合、続けて2コマ行われることもありますが、1コマの授業が二度に分けられて、それぞれ別日に行われることも少なくありません(経験上では、そちらの方が多かった)。

 フルタイムの学生であるなら、おそらく90分1コマが一週間に6つあるでしょう。
 そのため、追加のグループワークなどがなければ、大学に授業を受けに行かなければいけないのは、週に計9時間のみです。

 自習が中心の授業や、録音・配信される授業であれば、大学に行かなくてはならない時間は、さらに減ります。

 担当教員が風邪を引いたなどの理由により、授業が予定回数行われないことは珍しくありません。
 そういった場合に補講が行われることもありますが、僕が履修していた授業で実際に補講があったことは殆どありません。
 補講があっても、出席は自由で、学生からの質問を受けつけるだけのもので、20分ほどで終わりました。

 

授業外で自習する時間が必要
 日本の大学に比べると、大学で授業を受けなければならない時間は非常に少ないのですが、その分、自分で勉強しなければ授業についていけません。

 学年が上がるほど(少なくとも「第二言語としてのアイスランド語(Íslenska sem annað mál)」課程[2]コースについての紹介記事は、「「第二言語としてのアイスランド語(Íslenska sem annað mál)」課程の紹介」を参照。では)、この傾向は顕著になります。

 アイスランド大学に通い始めたとき、「授業時間の最低三倍は自分で勉強しないといけないでしょう」と教員から言われたのですが、僕の場合、三倍程度で大丈夫だったのは一年目だけで、学年が上がれば上がるほど、必要な予・復習の時間は増えていきました。

 また、明言されているわけではありませんが、「勝手に努力してね。嫌なら止めてもいいよ」というのが、アイスランド大学人文学部の姿勢であるように感じます。
 ただ、学生が助けを求めれば応じてくれるので、非情だとは思いません。

 

【単位】

・学生ビザの申請には、一学期で30単位の登録が必要
 学生ビザを申請するためには、各学期で最低30単位を登録しなければいけません。
 また、申請者は、原則として18歳以上である必要があります。

 

学生ビザで滞在を続けるには、75%の単位取得が必須
 大学生として学生ビザ申請するためには、まず各学期で最低30単位の登録が必要ですが、ビザ更新のためには、登録した単位のうちの75%(一年で44単位)を取得しなければいけません。

 アイスランド人の学生は、授業内容やスタイルが自分には合わなかったから、もしくは、他のことに興味をもったから、という理由で、気軽に単位を落としたり、専攻を変える人も少なくありません。
 また、アイスランドでは、留年することに対する社会的なプレッシャーは殆どないように見えます。

 しかし、学生ビザでアイスランドに滞在している人にとって、外国人局(Útlendingastofnun 英名:The Directorate of Immigration)が提示する上記の最低取得単位数を下回ると、ビザの更新ができなくなり、アイスランドに滞在できなくなります。

 これを読んでいる方の殆どは、アイスランド人や欧州経済領域(EEA)と欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国出身の学生と比べると、滞在条件が大きく異なりますので、ご留意ください。

 

【学費】

・大学、大学院ともに学費は7万5000ISK(アイスランド・クローナ)
 アイスランド大学および大学院は、在籍費として、年間7万5000ISKかかります。
 しかし、授業ごとにかかる教材費などを除けば、それ以上の学費はかかりません。

 今後どうなるかは分かりませんが、高くなることはあっても安くなる見込みは、今のところなさそうです。
最新の学費は、次のリンク先でご確認ください。
https://english.hi.is/university/registration_fees

 

【生活費】

・学生生活をする上での生活費は、最低でも11万円はかかる
 個人的な経験と友人らの話から推測すると、アイスランドで学生生活をするためにひと月で必要な生活費の最低額として、
光熱費やインターネット代を含む家賃(9万円前後)+食費(外食なしの自炊で2万円前後)=11万円
というものが目安になると思います。
 しかし
 また、外国人局は滞在許可の要件として、
18万9875ISK (アイスランド・クローナ)×滞在予定月数
の滞在費を残高証明等で証明することを挙げています。[3] … Continue reading

アイスランド大学は上記の18万9875ISKを[4]元々はレイキャヴィークでの生活費の最低平均額。を内訳して説明しています。
興味のある人は、下記のリンク先を読んでください。
https://english.hi.is/studies/living_costs_in_reykjavik

個人的には食費等に5万ISKや月に3万ISKも娯楽費に使いませんが、毎週末バーなどに行く友人は、約19万ISKではレイキャヴィークで生活できない!と行っていました。

 

【アルバイト】

・大学外でアルバイトをする学生が多い
 大学内の学生バーなどでアルバイトを募集していることもありますが、多くの学生は大学外でアルバイトをしています。

 

日本国籍保持者がアルバイトするには労働許可が必要
 欧州経済領域(EEA)と欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国の出身でない外国人がフルタイムの学生としてビザを取得し、さらにアイスランド社会でアルバイトをするためには、労働局(Vinnumálastofnun 英名:The Directorate of Labour)の発行する労働許可が必要です。

 アルバイト先が見つかったら、雇用主に契約書を作成してもらい、さらに外国人局に提出する労働許可申請書の確認とサインをしてもらう必要があります。[5]外国人が労働許可を申請する場合、書類の提出先は外国人局ですが、実際に許可証を発行するのは、労働局です。

 また、労働許可を申請したからと言って、労働局からアルバイトの許可が下りるとは限らず、なぜ申請者を雇用しないといけないのか、という作文を雇用者にしてもらう必要があるかもしれません。さらには、アイスランドだけでなくEEAやEFTAで募集をしたけれども応募がなかった場合に限って労働許可を発行する、ということもありえます。

 雇用理由書を提出したり、それ以外の手段を講じたうえでも許可がおりない場合は、違うアルバイト先を探すか、諦めて勉強に専念してください。

 

・学生の労働時間の上限はフルタイムの40%
 学生ビザでのアイスランド滞在者の労働は制限されており、フルタイムの40%しか働けません。そのため、基本的には週に16時間(週8時間×5日の40%)が上限です。
 冬休みや夏休みなど、大学の授業が長期でない時期には、それ以上の労働が可能ですが、それが雇用契約書で制限されていないことを確かめ、労働局にも確認を取ることをおすすめします。
参考:https://vinnumalastofnun.is/en/employer/work-permits

 

・アルバイトで生活費を稼げるのか
 アイスランドでアルバイトをしたとして、それで月々の生活費がどれくらい賄えるか、ということについては、給与次第なので何とも言えません。
 ただ、学生ビザでアイスランドに滞在する外国人は、フルタイムの40%(たとえば週8時間×平日5日がフルタイムだとすると週に16時間)しか働けません。[6]たとえそれ以上働いたとしても、給料は支払われないでしょう。夏休みのような大学が長期休業中の期間であれば、フルタイムでも働けます。

 上限いっぱいにアルバイトをして節約すれば、実質的な生活費を稼ぐことはできるように思いますが、外国人局の出す要件[7]月にこのページの【生活費】を参照。を満たすためには、さらに冬休みや夏休みなどの長期休暇中にもアルバイトをする必要があるでしょう。

※2018年9月に施行されたワーキングホリデーの滞在・労働条件については、以下の英語ページを参照してください。
http://utl.is/index.php/en/working-holiday

 

【その他】

アイスランドに来る前にすべきこと
 おそらく、現地の人とのコミュニケーションが破綻しないように英語(もしくはアイスランド語)を勉強することを挙げる人が多いと思います。
 しかし個人的には、アイスランドの大学での学生生活を実現、継続するために致命的な問題になりうる滞在許可等について疑問点や不明点があるならば、外国人局など、実際にその問題を処理する当局にメールで(記録が残るかたちで)質問することが何より必要だと思います。
 たとえ語学力に自信がなくとも、いざというときに自分で行ったメールでのやり取りが何かの証明をする役に立つかもしれませんし、何より第三者が仲介することで発生しうる誤解を避けられます。
 もしかしたら、問い合わせところで「FAQを読め」などと返されてしまうかもしれませんが、公式ウェブサイトのFAQをしっかり読みことや母国語以外で問い合わせをすることに慣れることは重要です。
 もしかしたらアイスランド滞在中に学生登録課や外国人局の窓口に単独で乗り込む必要が一度ならず出てくるかもしれませんが、そんなときにも事前に問い合わせた記録を外的に証明できれば、状況が多少好転するかもしれません。

 


 

最終更新日:2019年8月1日

脚注

脚注
1 参照:http://english.enicnaric.is/entry-requirements.html。リンク先のページには、海外からの入学希望者がアイスランドの大学(国立アイスランド大学に限らない)に入学するための最低限の要件が載っています。実際にアイスランドの大学で勉強するためには、この要件にくわえ、それぞれの大学が求める語学力を証明する必要があります。
2 コースについての紹介記事は、「「第二言語としてのアイスランド語(Íslenska sem annað mál)」課程の紹介」を参照。
3 カップルならば、28万4813ISK×滞在予定月数の額の証明が必要で、そこから18歳以上の家族ひとりごとに9万4938ISK×滞在予定月数だけ滞在許可取得のための証明額が増えます。http://utl.is/index.php/en/basic-requirements1#supportを参照。
4 元々はレイキャヴィークでの生活費の最低平均額。
5 外国人が労働許可を申請する場合、書類の提出先は外国人局ですが、実際に許可証を発行するのは、労働局です。
6 たとえそれ以上働いたとしても、給料は支払われないでしょう。夏休みのような大学が長期休業中の期間であれば、フルタイムでも働けます。
7 月にこのページの【生活費】を参照。